ヒカルファンがロコンドの広告宣伝戦略を分析してみた（YouTuberをフル活用！）その１ - 窓際サラリーマンの希望の星（現在、ソウルで一応駐在員やってます。。）

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皆さん、ロコンドという会社を知っているでしょうか？

「くーつを買うならっロコンド♪」というCMを耳にしたことがあるかもしれません。

ロコンドは靴のEC（electronic commerce）サイトを運営する会社です。

最近は靴以外にも衣料品・化粧品・アクセサリーなど業容を拡大しているようですね。

アメリカのZappos.comの日本版といったところでしょうか。

LOCONDOの事業内容は↓のYouTube（決算説明会）を見ると分かります。

質疑応答除きで約40分間。1.5倍速～2倍速で約20～30分で見終わります。

自称出たがり社長兼音楽家（作詞担当）である田中社長が分かりやすく説明してくれます。主力事業はＥＣモール運営・ＩＴ×物流・Ｄ２Ｃの３つです。

youtu.be

★You Tuberを活用した広告宣伝戦略

さて、なんで唐突にロコンドの話を始めたかと言いますと、ロコンドの2020年の広告宣伝が非常に面白かったからです。私は（残念ながら）韓国在住で、テレビの代わりにYouTubeを廃視聴しています。2020年、私のよく見ているYouTuberヒカルがこのロコンドとタッグを組んで面白い試みをしていました。その取り組みが革新的でとても興味深いものだったので解説しようと思います。

★まず、なんでＥＣサイトにとって広告宣伝が重要か？

ＥＣサイトにとって、何より重要なのは「集客」です。

様々なＥＣサイトが乱立する中、とにもかくにも自社のサイトに来てもらわないことには売上が伸びません。

さて、どうするか？

まず、サービスを充実させること。

ロコンドでいうと、

　・様々なブランドに出店してもらう

　・自宅で試着、気軽に返品

といったところです。

ただし、サービスが充実したところで知名度がなければお客さんが来てくれません。

そこで「集客」のために宣伝広告が重要になってきます。

★ロコンドが仕掛けた戦略

ロコンドが仕掛けている広告宣伝戦略を一言でいうと「中抜き」である。

どういうことかこれから解説します。

【テレビ広告（2018年～2019年）】

広告宣伝で分かりやすいのは、テレビＣＭです。

テレビＣＭを制作する際の、関係者を図にすると↓。

（実際は下請けを含めもっと関係者が多いが簡略化しています。）

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ロコンドは2018年ＣＭ3月よりデヴィ・スカルノを出演させたCMをうったりして、売上高を急上昇させている。その後、2019年Ｍ１王者「霜降り明星」などをＣＭに起用しているようです。

【YouTuber広告（2020年）】

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YouTube広告を図にすると↑のとおり。

YoutuberのYouTube上での稼ぎ方は２つあります。

Ａ．案件（企業案件）

　企業が影響力のあるYouTuber（インフルエンサー）に商品の広告をお願いするものです。ゲーム、化粧品、アパレルなどをYoutuberのちゃんねる内で宣伝するものです。ステルスマーケティングをすると叩かれるので、はっきりと番組内で「プロモーションを含みます。」といった表示がされます。見ている方からすると、少し興ざめすることがあります。

Ｂ．広告収入

　これは再生数に基づいてGoogleから支払われる広告収入である。これは、Googleに対して広告依頼をする広告主が払う広告料の一部がYouTuberに支払われるものです。トップユーチューバーになると億単位の広告収入を稼ぐといわれています。

テレビ広告の比べてYOuTuber広告は図がシンプルですね。

なお、YouTuberも事務所（芸能事務所みたいなもの。UUUMやVAZ、Ｋiiiなど）に所属している人とフリーでやっている人の2パターンあります。今回の登場人物であるヒカルさんや宮迫さんはフリーですので、事務所は登場しません。

ロコンドが今回仕掛けたのはこのYouTube広告です。これによって、劇的に広告費を下げることに成功しています。テレビＣＭは間に広告代理店や芸能事務所が入ることによって最終的な広告費がどんどん膨らんでいく。Youtuberというのは、テレビ局・芸能人・広告代理店を1人でやっているようなもの。余計な組織が間に入らないため、テレビ広告に比べて広告費を抑えることができる。

一連のヒカルとの動画内で田中社長は「2020年度はテレビ広告を抑えようと思っていた」という趣旨の発言をしていました。筆者は、この発言の裏にある現象として推測するのは、ＣＭを打ってもサイト集客数の増加に繋がらなくなっていたのではないか、ということだ。

ロコンドはＣＭが放送される時刻が分かるので、その後、ＣＭ放送後、時間の経過ごとのサイトへの集客数が計測可能である。テレビＣＭは視聴者数が多いので広告効果は絶大。おそらくテレビＣＭを始めた当初は集客者数が目に見えて増えたと推測できる。ところがテレビＣＭを打ち始めて1年が経過したころ、集客数が増えなくなっていたのではないだろうか？

若者のテレビ離れが叫ばれて久しいが、現在のテレビの視聴者は高齢者である。テレビＣＭを打ち始めていた頃は、ネットを使いこなす層がサイトを初めて訪問し、集客につながっていたと考えられる。しかし、テレビのメインの視聴者である高齢者は一向にサイトを訪問することはない。彼らはジャパネットタカタの通販番組をみて電話をすることはあっても、ロコンドのサイトを訪れることはないのである。テレビＣＭで集客できる層はある程度集め終わった中、新規にテレビＣＭを打っても意味がない。また、そもそも録画機能が進化する中、ＣＭは飛ばされて見ない、という状況がより進行したのかもしれない。

いづれにせよ、データに基づいて、テレビ広告は費用対効果に見合わない、という結論になったと推測される。ロコンドの様なＥＣ企業はデータドリブン。データがすべてである。

そうして迎えた2020年、ロコンドが目を付けたのがYoutuberやインスタグラマーなどのインフルエンサーを活用した広告。より顧客ターゲットを絞って広告をしていこうという意図がみえる。前述した↑の図のYouTuber広告はそのひとつである。

ちなみに20年第2四半期決算報告時点で広告関連費用は前年同期の約12億円から約5.5億円と激減している。内訳では固定費（テレビＣＭ等）が5.1億円から0.4億円と明確に下がっているし、「テレビからYouTubeへシフト」と定性的なコメントもある。しかし、アクティブユーザー数は過去最高値を記録している。

「 2021年2月期_第2四半期決算説明資料［PDF/1MB］」

https://www.locondo.co.jp/wp-content/uploads/2020/10/2021%E5%B9%B42%E6%9C%88%E6%9C%9F-%E7%AC%AC2%E5%9B%9B%E5%8D%8A%E6%9C%9F%E6%B1%BA%E7%AE%97%E8%AA%AC%E6%98%8E%E4%BC%9A%E8%B3%87%E6%96%99.pdf

いや、待て待て待て。YouTuber広告はほかの企業もやっている。

なんでロコンドは成功しているんだ？

ロコンドは何が革新的なのか？

★ロコンドの戦略の凄いところ３つ！

１．企業案件がストーリー仕立てになっている。

売上によって報酬が決まる視聴者参加型のYouTube番組となっているので、ヒカルファンを靴を買って応援しようという気にさせる仕掛けがなされている。これがただの企業案件と大きく異なる点。以下がその概要。視聴者は見え見え企業案件には心動かされないが、ストーリーには惹かれるのである。

【概要】

ヒカルは自分でReZARDというアパレルブランドを持っており、ReZARDの靴をロコンドで作ってほしいというところから話が始まる。

　↓

「〇〇万円分だけ売れたら、ＣＭを作ってほしい。」という約束をする。

ＣＭには友達の宮迫も一緒に出してほしいと依頼。

　↓

ヒカル砲炸裂。サーバーダウンさせ、あっという間に目標達成。

　↓

ＣＭ決定！

　↓

テレビ局側が宮迫の出演に難色を示す。

　↓

なんとか、テレ東でＣＭにＯＫが出る。

　↓

YouTubeライブ放送でテレビを同時視聴し、宮迫の地上波復帰の瞬間を祝う。

２．YouTuberの人選が絶妙

ロコンドが今回タッグを組んだYouTuberはヒカルである。

【ヒカル概要】

　・チャンネル登録者数：約430万人　日本で現在16位

　・職業カリスマを名乗る日本屈指の人気Youtuber

　・金持ちYouTuberというキャラで大金を使う企画動画を定期的に実施

　・詐欺師・ダークヒーロー・闇属性・エンゼルフレンチなど様々なあだ名あり

　・動画活動としては元々ゲーム実況からスタート

　・祭りくじの闇を暴く動画がバズる。

　　当たりはなかった？祭りくじで悪事を働く一部始終をban覚悟で完全公開します - YouTube

　・2017年VALU事件で大炎上し、一時活動休止。

　　当時決まっていたＣＭもキャンセルとなる。

　・ジャンルを問わず漫画が大好き

　・絶叫マシーン・幽霊、心霊系・虫が苦手

　・1夫多妻制を宣言（結婚はしていない）

　・視聴者層は男性の大人が多いとのこと

　・2020年1月、闇営業問題で自粛していた宮迫博之がYouTubeを始めるにあたり、2本目の動画からコラボ出演。以後、頻繁にコラボをしている。

　・個人＋自社の総資産は40億円程度らしい

　“金持ちYouTuber”ヒカルの総資産は40億円？加藤浩次「俺、やる気なくなってきたな」（リアルサウンド） - Yahoo!ニュース

　・金銭的にはあがっており、動画内で今何が欲しい？という話になると「影響力」と話している。

なんというか、ヒカルは少しダークなイメージがあるので、通常の上場企業は手を出しにくいのである。通常の企業であれば好感度の高いクリーンなインフルエンサーとタッグを組むものである。ところが、ロコンドはほかの企業が手を出しにくいインフルエンサーとあえて組んでいるように見える。この背景については田中社長が動画で解説している。

【徹底追及】なぜ綾瀬はるかさんを起用しないの？デヴィ夫人、ヒカル、宮迫ファンなの？ - YouTube

この動画で損失×その発生確率とリターンを比べてシビアに算盤をはじいていると発言している。実際、想定される損失は大したことがなく、周りは必要以上におそれすぎているだけとのこと。あえて、少しイメージの悪いが絶大な人気があるヒカルを選んでいるのである。また、知名度は抜群だが、闇影響問題でテレビ業界から追放された宮迫博之についても同様の理由で選んでいると思われる。（宮迫についてはヒカルと宮迫の関係性からくるものであるが）

その他にもヒカルを起用した理由としては、視聴者層が大人の男性中心（テレビ広告でリーチしていない層）というのも理由だったのかもしれない。いくら登録者数が多いYouTuberでも視聴者が子供中心では靴は売れないのである。

３．関係者全員がハッピーになっている

　★YouTuberヒカル

　もはや十分なお金をもっているヒカルにとって何よりほしいものは影響力である。ヒカルは2020年ロコンド関係で計12本の動画を出しているが、どれもかなりの再生回数をたたき出している。（記事の最後にリンクをまとめてあります。）このロコンドシリーズはかなりのヒットといってよいだろう。影響力は高まり、動画から得られる広告収入もがっつり手に入れたわけである。（ロコンドからの広告料は謎）ヒカルはハッピー！

　★YouTube視聴者

　ヒカルの手がけるReZARDのコンセプトは２つある。

「ハイブランドと同じ着心地の服をハイブランドよりも圧倒的に安く」

「着心地の良さを追求し、こだわりを持った上質な生地をシンプルかつラグジュアリーなデザインに」

　今回ロコンドと一緒に手掛けた靴についてもこのコンセプトが適用されている。動画を見ていると、ヒカルはReZARDで儲ける気があまりないように思える。ReZARDの靴についてもブランド使用料の様なものはほとんど取っていないのではないだろうか。そもそも既に財を成しているので、お金より影響力なのだろう。

結果、視聴者は素晴らしい品質のものを安価に入手することができるのである。また、再生回数の多さはそれだけこのヒカルちゃんねるでのロコンド企画を楽しく視聴している人が多いということ。視聴者もハッピー！

★ロコンド

ヒカルの動画を見て、ロコンドサイトへの訪問者数が増！ＥＣサイトとして一番重要である集客数が増えたわけである。そして、ReZARDの靴がバカ売れしているので、売上アップ。YouTuber×物販の領域ではUUUMを大幅に上回り既にトップランナーとのこと。

決算説明資料によると、広告宣伝費は昨年比激減しているのにもかかわらず新規会員登録者数は横ばいとのこと。ヒカル・宮迫博之へどの程度の金額を払っているかは分からない。動画内でヒカルは「広告の契約料や儲けはいらないので視聴者に還元しましょう。コロナでみんな大変やし」という趣旨の発言をして、実際ロコンドサイトでの値引き販売を実施していた。

決算的にはプラスしか見当たらない上に、株価もアップしている。また、革新的な取り組みを実施したということでロコンドの評判もアップしたように思える。（この取り組みについては、田中社長が↓の動画で解説している。）

ヒカル＆宮迫企画に飛び込んだファーストペンギンはこうして生まれました。 - YouTube

ロコンドもスーパーハッピー！

★ロコンドモールへの出店企業

ReZARDが売れるのは結構なことだが、ReZARDしか売れないのであればロコンドモールへの既存出店企業からすると面白くない。ただ、パイをReZARDに奪われただけということになるからだ。しかし、決算説明資料によると既存公式ショップも成長しているとのことである。ReZARD購入者のうち約10％はロコンドでReZARD以外のブランドを再購入しているとのデータも示されている。そう、前述したヒカルの「視聴者還元の効果」がロコンドモールの出店企業に出ていると読み解くことができる。個人的にはここがなんとも絶妙で上手い施策だと思う。ロコンドモールへの出店企業もハッピー。

★本当の仕掛け人は誰？

と、長々とロコンドの広告戦略について解説してきた。興味を持たれた方は一連の動画を最後にまとめておいたので是非視聴してほしい。動画はいきなりロコンド本社に突入したり、急に呼び出されました、みたいな設定で作られているが、あらかじめ決められたストーリーに沿って撮影されていると思われる。

ここで、１つ疑問がある。この一連の企画は偶然起きたことだろうか？

私はそうは思わない。相当頭の良い人達が動画を出すタイミングを含めかなり綿密にデザインしているのではないだろうか。そして、動画内ではとぼけた雰囲気を出しているが、ロコンドの田中社長は確実に仕掛け人の1人ではないだろうか？実際のところは分からないが、皆さんどう思われますか？

★今後の展開

長くなったので、第一弾はこれくらいにしておきます。

まだまだ書きたいことがあるので、また後日書きます。

昨日（1/10）のヒカルの動画でまた新しい試みが発表された。

『テレビとYouTubeの同時刻同時配信』

これまた新しい試みがきました。楽しみです。

ロコンドの第3四半期決算発表が2021年1月14日（木）に予定されている。これまでの傾向からすると、おそらくその夜のヒカルチャンネルとロコンドチャンネルで新しい取り組みについての発表があるだろう。最後に、ここにその内容を予想しておきます。

【取り組み予想】